漫画の師匠からよく言われたこと
ボクは20代の頃、ある漫画家の先生のところでアシスタント修行をしていました。その修業時代に師匠からよく言われたことをご紹介したいと思います。
「漫画家は絵がうまくなったらおしまいだ。」
絵がうまくなりたいと思って漫画の修行をしているのに「絵がうまくなったらおしまい」とは?
「漫画家になるにはもっと絵がうまくならないと…」そう思っていた当時は意味がよくわかりませんでした。ところが最近ではその言葉の意味がよくわかるようになりました。
そうなんです。絵の魅力はうまい下手で決まらないのです。
それでは絵の魅力を決めるものとはなんなのでしょうか?
絵の魅力を決めるのは、描いた人の人間的な魅力です。
たとえ下手だとしても、その人が一生懸命に引いた線には魅力があふれてくるのです。何に関してもそうですが一生懸命な人には魅力がありますからね。
小さな子供の描いた絵に魅力があるのはそのせいです。
反対にたとえ上手な絵でも「こんな感じでいいかな…」と気持ちを抜いてしまった絵には人を引き付ける魅力が宿りません。
不思議なものでテクニック的なものがついてくると、一見するとうまく見える絵が出来上がるのですが漫画に必要な勢いがなくなってしまうということがよくあります。
漫画家は絵がうまくなったらおしまい…かと言って、いつまでも下手なままではプロになれないし…。漫画家の修行というのはなかなか難しいものなのです。