前から買おうと思っていた『荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)
キャラクター身上調査書
荒木飛呂彦さんの漫画の極意として有名なのが『キャラクター身上調査書』です。
キャラクター身上調査書とは漫画に登場する各キャラクターの特徴や経歴を事細かに設定しておくというもの。
※荒木飛呂彦さんオリジナルの『キャラクター身上調査書』はこちら→NHK高校講座「漫画はやっぱりおもしろい」荒木飛呂彦さんオリジナル『キャラクター身上調査書』
生年月日や血液型、身長・体重はもちろんのことキャラクターの日常のこだわりにまで本当に細かいところまで詳しく書かれています。
これをもとに生きたキャラクターが原稿用紙の中に生まれてくるのですね。
名著・手塚治虫の『漫画の描き方』
漫画の描き方の本は数多くありますが、この本のようにプロのノウハウを詰め込んだものは意外と少ないのです。
ところで『荒木飛呂彦の漫画術』を読んで思い出したのが手塚治虫の『漫画の描き方』です。
天才・手塚治虫が書いた漫画の描き方と荒木飛呂彦さんの漫画術を読み比べると時代の差が見えてくると同時に、漫画の普遍的な部分も見えてきて興味深いです。
手塚先生の本はかなり古い時代のものなのですが、たまに読み返してみてもハッと気づかされる部分が多くあり本当に名著だと思います。
そんな流れを引き継ぎながらまったく新しい漫画の境地を切り開いた荒木さんの漫画術を知ることができるのが『荒木飛呂彦の漫画術 』なのです。
「地図」を携えて「王道」をすすめ
ボクがこの本を読んで一番印象に残ったのが『はじめに』の部分の『「地図」を携えて「王道」をすすめ』という文章です。
漫画に関わったことのある人間なら良くわかるのですが、漫画の世界には地図はありません。真っ白な原稿用紙に毎日向かいつつ自分で描いた漫画そのものが漫画家の道となるわけです。
しかし脇道にそれることなく生涯を漫画家として歩き続けられる人はほんの一握りの人間だけ。
そしてわざわざその成功した手法や試行錯誤を人に教える漫画家もいなかったのです。
「漫画の王道」そしてそれにいたる「地図」を示したのはこの本が初めてではないのでしょうか?
とにかく荒木飛呂彦さんの漫画に対する情熱・研究・勉強・努力、そして冷静な分析力に圧倒される本です。
漫画家志望、映画・ドラマ監督志望、脚本家志望、クリエイターの方、この機会にぜひご一読をおすすめします。