マゼラン研究の一級資料、ピガフェッタの「最初の世界周航」
ピガフェッタはマゼラン艦隊の世界周航に参加したイタリア人航海者。
マゼランの指揮下、フィリピンのマクタン島のラプラプ王との戦いに参加している。マゼランはその戦いで戦死したがピガフェッタは生き残る。ピガフェッタは1522年9月6日にスペインにたどり着き世界一周を成し遂げたビクトリア号の乗組員の一人なのだ。
航海の間、休まず日誌をつけ続けたピガフェッタ。立ち寄った地域の生活習慣や言葉などの詳細な記録を残している。
したたかで知恵があり勇猛なフィリピン諸島の王たち
セブ島での王族と島民へのキリスト教布教に成功したマゼラン。しかしマクタン島の王ラプラプとの戦いに敗れる。そして残った者たちもセブ王の裏切りにあい、招かれた宴席の最中に襲撃を受ける。
セブ島の王は表向きはマゼラン艦隊の武力に驚きキリスト教への改宗をありがたがってはいたが、実のところはマゼランたちを自分たちの部族間の勢力争いにうまく利用しようとしていたようだ。
したたかで知恵があり勇猛なフィリピン諸島の王たち。南の島々で躍動する王たちの姿が浮かび上がってくる。
セブアノ語(ビサヤ語)研究の始まり
ピガフェッタはセブ島滞在中に現地人の生活の様子を詳しく記録している。ココナッツからミルクを作り、椰子酒を飲み、バナナを食べ、儀式の際には豚を一頭捧げる…など現代のフィリピンにも通じる習慣が書かれており興味深い。
さらにセブアノ語(ビサヤ語)についても記載されており、「既婚の女=babay」「目=matta」など現代にも通じる言葉が集められていておもしろい。
なんでもありの大航海時代
ピガフェッタが記述した「最初の世界周航」、生き残ったスペイン人航海者たちの口述をもとに記録したトランシルヴァーノの「モルッカ諸島遠征調書」とともに500年も前の世界一周の記録を手元で読むことができるというのは実に感慨深い。
ポルトガル人であるマゼランがスペイン王の信任を受け、多くのスペイン人を含む乗組員たちを率いて実行した世界周航は波乱の連続。裏切り、惨殺、皆殺し、拉致、恫喝…なんでもありの大航海時代の価値観には驚かされます。